末吉日記

マンガとアニメのレビューとプリズムの煌めき

アイカツ!コミカライズのぷっちぐみベストシリーズが"凄い"

 

アイカツ!のぷっちぐみベスト!シリーズのコミカライズを読みました。

アイカツ!まんが&まんが家カツドウ! (ぷっちぐみベスト!!)

アイカツ!まんが&まんが家カツドウ! (ぷっちぐみベスト!!)

 
アイカツ!まんが&12星座うらない (ぷっちぐみベスト!!)

アイカツ!まんが&12星座うらない (ぷっちぐみベスト!!)

 

 読む前はふーん?ぷっちぐみ?幼年誌だしな~~という感じで正直ナメてたんですけど、読んだら圧倒的な出来にブチのめされました。凄い、凄いですこのコミカライズ。
アイカツ!のぷっちぐみベスト!!シリーズは2冊出てまして、「まんが&まんが家カツドウ!」にはぷっちぐみの2014年3月号付録の別冊小冊子のために描き下ろされたコミックが、「まんが&12星座うらない」にはぷっちぐみ2013年11月号から2014年10月号までの連載コミックが収録されています。
どちらの本のどのエピソードもアイカツ!らしくよく練られていて素晴らしいのですが、そのなかでも特に感動したのが「まんが&まんが家カツドウ!」収録の「キラ☆パタ☆キャワワ♪」というお話でした。わずか8ページ(扉絵を抜けば7ページ)の短編なのですが、これがほんとに凄かったので、この記事ではこの短編がどう凄いかについて詳細に語っていきたいと思います。

まず作品のあらましから説明しますと、この「まんが&まんが家カツドウ!」に収められているのは「アイドル7人物語」という題の短編オムニバスで、ソレイユの3人とドリアカの4人の合わせて7人のアイドルたちが、デザイナーズアクセサリーコレクション(DCD2014年第3弾のキャンペーンレアのシリーズ)のアクセサリーを得る過程をそれぞれ描いたものです。第5話の「キラ☆パタ☆キャワワ♪」はタイトルからわかる通り風沢そらが主役の回で、そらがいかにして自らのブランド、ボヘミアンスカイのデザイナーとして「ボヘミアンサークレット」を作り上げたかが主題になっています。


*あらすじ*
いちごとそらはショーの仕事のために動物園を訪れていました。ふたりがショーまでの空き時間に園内を散策していると、飛んできた一羽の鳥にいちごのカチューシャが掠め取られてしまいます。いちごはその鳥を追いかけ、道中で仲良くなった大きな鳥の助けを借りてカチューシャを取り戻しますが、取り戻したカチューシャは壊れてしまっていました。そこで、そらは壊れたカチューシャを即興でアレンジしてアクセサリーを作り、いちごへ渡します。いちごは大いに喜びますが、そうこうしているうちにショーの時間が迫ってきていました。ふたりは大きな鳥に教わった会場への近道を急ぎますが、会場すぐ手前の切り立った急な坂に足止めされてしまいます。途方にくれるそらでしたが、いちごはためらいなくその坂を飛び降りてゆきます。それにつられるようにしてそらも坂を飛び降り、無事間に合ったふたりは見事にショーを成功させます。後日、この日のいちごの自由な姿に着想を得て、そらはボヘミアンサークレットを完成させたのでした。
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*レビュー*
この作品の演出上の要点は、そらのデザインした二つのアクセサリーである、壊れたカチューシャをアレンジしたものとボヘミアンサークレットをめぐる対比にあります。

この二つのアクセサリーのデザインについて、そらは質問を投げかけられます。カチューシャについてはいちごに「こういうのどうやって考えるの?」、サークレットについてはセイラに「どうやって思いつくの?」と。

これらの問いかけに対し、カチューシャについては「今日は鳥からイメージをもらったの。鳥はきれいで自由で…大すきよ。」と答え、サークレットについては「今回のイメージは…、さい高に自由でキャワワな女の子から!」と答えています。

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カチューシャのアレンジについて(まんが&まんが家カツドウ!P49)

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サークレットのデザインについて(まんが&まんが家カツドウ!P52)

これらを比較してみますと、この二つのアクセサリーをめぐるやり取りが綺麗に対をなしていることがわかります。あるアクセサリーについて、「どうやって」「考える/思いつく」のか、という問いに対し、そのイメージが「きれい/キャワワ」で「自由/さい高に自由」な「鳥/女の子」からきたものであるとそらは答えています。

この二つのやりとりの相似から、そらはいちごと鳥とを重ねるイメージを持っていることがうかがえます。この重なりは二つのアクセサリーがどちらも鳥の羽をあしらったものであるというデザイン上の共通点にも現れています。

その重なりがそらの内面にどのように生じたかについては、物語中にいちごが鳥のように自由に「とぶ」シーンが繰り返し描かれることによって描き出されています。特にP50の「鳥だったらとべるのにねっ」とそらが嘆いた直後にいちごがとんでみせるのは、そらがいちごを鳥のように感じるきっかけとして大きなものだったでしょう。

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鳥を追って柵をとび越えるいちご(まんが&まんが家カツドウ!P47)

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坂をとび下りるいちご(まんが&まんが家カツドウ!P50)

 

さて、先ほど、アクセサリーをめぐる二つのやり取りは綺麗に対をなしていると語りましたが、ひとつだけ対称から外れた要素があります。それは鳥に対してだけ語った「大好き」という言葉です。

いちごと鳥の深い重ねあわせについては、ここまで語ったとおりこの短編全体を通して周到に演出されているわけですから、ここでいちごへの「大好き」が欠けていることはいちごへの好意がないことを意味するとは考えられず、むしろそらがいちごに抱いている好意を押し隠していることの表現として理解できます。「大好き」をあくまで暗示に留めることによって、そらの抱く思いのひそやかさと真摯さがかえって強く感じられるようになっているわけです。

 

わずか8ページながら、織り込まれた美しいパターンとそこから浮き上がるそらの愛情の紋様に魅了されずにはいられない、間違いなく珠玉の一篇であるといえます。
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これだけでももう十分な傑作といえるこの「キラ☆パタ☆キャワワ♪」ですが、さらに「まんが&12星座うらない」とあわせて読むと、この「キラ☆パタ☆キャワワ♪」にはさらなる仕掛けが組み込まれていることがわかります。
「キラ☆パタ☆キャワワ♪」でいちごがつけているカチューシャは、ぷっちぐみ2014年2月号付録の「ジュエリーハートカチューシャ」なのですが、「まんが&12星座うらない」収録の第5話では、なんといちごとあおいが「ジュエリーハートカチューシャ」のカードを交換しているところが描かれているのです。

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(まんが&12星座うらないP24)

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(まんが&12星座うらないP25)

ということは、そらがアレンジしたあの壊れたカチューシャは、いちごがあおいと交換した、元はあおいのものだったカチューシャということになります。

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(まんが&まんが家カツドウ!P48)

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(まんが&まんが家カツドウ!P49)

つまり、あおいが友情の証としていちごに渡したカチューシャをそらは愛情をこめてリメイクしていたわけで、いちごをめぐる3人の関係がカチューシャを介して密やかに描かれていた、ということになります。いや、本当に凄い、凄い以外の言葉を失います……。

 

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(まんが&まんが家カツドウ!P64)

そらがいちごをイメージしてデザインしたボヘミアンサークレットをあおいがすてきと褒めるシーンなどもエピローグ的に描かれており、この物語がいかに周到に描かれているかについてはもはや言を俟たないところであります。

このかなき詩織先生&小鷹ナヲ先生のタッグが描くぷっちぐみベスト!シリーズ新刊、「まんが&クイズ」は12/2に発売!あかりジェネレーションの面々がどのように描かれているのか。めちゃくちゃ楽しみです。

アイカツ!まんが&クイズ (ぷっちぐみベスト!!)

アイカツ!まんが&クイズ (ぷっちぐみベスト!!)