2016年の抱負は「たくさん文章を書く」に決めたのでたくさん文章を書いていくぞ!というわけで、このブログもたくさん更新していけたらいいなと思います。
そういうわけで、本年の書き初めとして、今回は元旦にテレビでやってる映画を観たぞ、観たんだぞ~~という話をざっくりと書いていきたいと思います。
観たのは「ライフ・オブ・パイ」です。
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私はこれタイトルとなにやら虎が出てくるらしいってこととポスターが「百剣-HYAKKEN-」のビジュアルとそっくりであることくらいしか知らなかったのですが。
観てみるとこれ、「『語ること』についての物語」で、私の好きなタイプのやつでした。
あらすじはwikipediaとかを参照してもらって…なんかwikipediaのあらすじ、くせのある文章ですね…。あらすじというよりは重要なファクトの列挙という感じ。私もあらすじを書こうとしてよくこういう文章を書いてしまうので親近感がわきます。筋をまとめる際に、作中の表現をとりこぼさないように、可能な限り要約せずにまとめるとこうなりますよね。ほんとは読み易くするためにもうちょっと要約した方がいいのでしょうが、そうすることによって削り取られてしまう情報量に後ろ髪を引かれて、こういう「AがBと言った。」みたいな記述の羅列になってしまうこと、あるなあ~。
話がそれましたが、まず私が印象深く感じたのは、この物語が小説家のヤン・マーテル(原作小説の作者)がパイという男性の語りを聞くという形式になっているところです。ドン・キホーテから脈々と連なるメタフィクションのアーキタイプですね。好きです。
物語の最後、パイは、トラとの漂流記と、人間との漂流記とのどちらがpreferかとヤンに問いかけます。これはかなり面白いところで、どちらが真実と思うか、ではなく、どちらが好ましいかをパイは尋ねます。この問いかけはずるいというか、そりゃ散々CGをふんだんに使った壮大な映像で長い時間かけてじっくり描写されたパイと動物との神話的物語の方が、暗い病室でごく短い時間で淡々と語られたコックや母との地味かつ陰惨な物語より好ましいと思いますよね。ヤンもトラが出てくるほうがよいと答えます。
冷静に考えると虎とシマウマとハイエナとオランウータンと漂流してきました~なんて話より人と乗っていて色々事件が起こって自分だけ助かりましたって話のほうが信頼に足るもっともらしい話ではあるのですが、"よりよい"のはやはり良く語られた面白い物語であって、これは、少年時代のパイがヒンドゥーの祭りの流し灯籠や荒唐無稽な神話や、田舎のキリスト教会の荘厳な雰囲気や、あるいはモスクから聞こえる言葉の美しさに、つよく心打たれて信仰心を得た体験とかさなるものなのではないかなーと私は受け取りました。
ヤンはこのふたつの物語のどちらを好むかについて「神の話でもある」と言いました。パイにとっての神は、ヒンドゥーの踊りや、キリスト教の建築や、イスラムの祈りの言葉の中にこそ存在し、それは「物語」にも当然ながら宿るということなのだと思います。
ヤンは虎との物語を選び、そしてこの物語はヤンのものとなり、ヤンはこの小説を世に著します。ふたたび物語を紡ぎはじめた彼に訪れたのは「ハッピーエンド」であったに違いないでしょう。
いきいきと魅力たっぷりと語ることによって荒唐無稽な筋書きのお話に命がふきこまれ脈打ち出し、美しく輝く――という、物語ることの魔力を壮大なCGによる映像美とメタフィクション構造で語りきった面白い作品でありました。映画館で3Dでみたらより強い魔法にかかったろうと思います。
原作についてもwikipediaでざっと読んでみたところ、虎とボートで漂流するというプロットと「命の輝き」についてはMoacyr Scliarの“Max and the Cats”を基にしているそうです。Moacyr Scliarはブラジルのマジック・リアリズムの作家で、Max and the Catsは1981年発表の小説。邦訳はなさそうなのがかなしいところですね。
あと、虎の名前のリチャード・パーカーはこれが元ネタですね。
http://enigma-calender.blogspot.jp/2015/07/Mignonette.html
ポオの小説の登場人物であり、実在の事件の被害者のひとりであり、そしてどちらでも海難事故で人に食べられてしまったという数奇な運命の人物。虎が現実なのか、それとも虚構なのかを問うお話にひっかけるフックとして最高に決まっててめちゃアガりますねこれ。最高。
なんかまとまりない感じですがライフ・オブ・パイ、面白かったぞという話でした。これくらい雑な感じで今年はたくさん日記更新していけたらと思います。