末吉日記

マンガとアニメのレビューとプリズムの煌めき

KING OF PRISMの輝き

劇場版アニメーション、「KING OF PRISM by pretty rhythm」(以下キンプリ)を公開初日に観てきました。

もの凄く良かったです。

その良さを書き留めるべくレビューを試みたのですが、お読みになる前に一点ご注意いただきことがあります。

私はプリティーリズムシリーズが好きで好きで、そのプリリズを継承したプリパラや、プリパラの劇場版作品も楽しんで観てきました。このレビューには、キンプリについてはもちろん、以上に挙げましたプリリズ、プリパラシリーズへの言及が多く含まれます。ですので、今回キンプリを観て初めてプリティーリズムに触れた!という方にはピンと来ないものになっている可能性が高いです。そのような方は、レビューを読まれるよりも先に、兎にも角にもまずプリティーリズムを観てください。キンプリから入った方はプリティーリズム・レインボーライブ→劇場版プリパラ み~んなあつまれプリズム☆ツアーズと観るのがお薦めですよ。

なんらかの動画配信サービスで観られると思いますので、キンプリに惹かれた方ならぜひぜひ観てください。

 

それではキンプリをレビューしていきます。以下ネタバレを含みます。

17/6/7編集。

19/5/6編集。(すでに配信終了した動画配信サービスを勧めていた点など修正)

 

 

 

※ジャンプ名などはわたしが劇場で聴きとったものであり、およそ不正確です。ご注意ください。

 

「スタァ…」

シンが宙を駆け、聖の声が響き渡った瞬間、涙があふれた。いま観ている映画が、まぎれも無くプリティーリズムの新作であるということが心の芯から理解できた。

冒頭のathletic coreではシンのプリズムジャンプへのオーバーなリアクションに笑い、続くシンの自転車ジャンプでは聖の「スタァ…」に心を強くつかまれ、EZ DO DANCEのバトルとシンの無限ハグに熱く燃え、flavorにプリズム☆ツアーズ(以下ツアーズ)・ルート4からここまでの長い道程に感じ入り、そして、Over the Sunshine!の底抜けな明るさに笑顔で涙を流した。プリズムの輝きは確かにここにある。そう確信させてくれる映画だった。

 

・特に印象に残ったショー

flavorが良かった。スターライトエクスプレスに乗って新天地へと旅立って行くコウジと、それを見送るヒロとカヅキ。ここで描かれる、Over the rainbow(以下オバレ)の3人が活動休止を告げながらも再会を誓う姿は、ツアーズのルート4で彼らが書き残した「また みなさんの前に 戻ってくることを 約束します!」のメッセージと深く重なるものである。

 

この重なりについて語るために、先にツアーズについて語っておこうと思う。

ツアーズという作品については以前別のブログでレビューを書いた。

劇場版プリパラ み~んなあつまれ!プリズムツアーズ 感想【ネタバレ】:末吉のブロマガ - ブロマガ

ツアーズにおいては、プリティーリズムがコンテンツとしての終焉を迎えようとしていることと、その血脈がプリパラへと継承されていることが、世界が崩壊していくさまと、プリズムの煌めきを受け継いだらぁらたちプリパラキャラクターの奮闘により世界の崩壊が防がれることによって擬えて描かれている。非常にメタフィクション的な趣向の強い映画であり、その暗示に満ちた構造の巧みさに深く感動させられた。

しかし、あの映画のテーマの主軸を「継承」と捉えるとき、オバレに再会の約束を取り付けられて終わるルート4をどう解釈すればよいのかがわからなかった。しかもルート4にだけ作画等のリソースが割り振られていて、どうにも据わりの悪さを感じていたのだった。

 

それから時は流れてキンプリの公開直前の2015年の12月。「エーデルローズ第2次入学説明会」と称して、ニコニコ生放送で特番が放送された。

live.nicovideo.jp

ここで菱田監督が、ツアーズについて、そしてキンプリについて語った内容は、非常にショッキングなものだった。

町田でのイベント、新曲flavorの入ったアルバム製作、法月仁お誕生会、クリスマスライブでのオバレのビデオといった形でボーイズ企画の命脈をなんとか保ってきたこと。

ツアーズは元々プリティーリズム単独の企画であったところを、プリティーリズムだけでは興行上弱いという理由から、プリパラの力を借りることになったこと。

ツアーズのルート4は制作をやめるよう指示されたが、それをはねのけて作ったルート4が他のルートの3倍の動員を達成したこと。

そして、キンプリが作られたこと。

 

据わりの悪いルート4の作られた理由が、このニコ生を通してやっと理解できた。プリティーリズムという物語をもっと語り続けたい監督が、プリティーリズムのひとつの終焉を描かなくてはならない。その心理的分裂が、ツアーズにおけるルートの分岐として現れていたのだ。監督が自身の欲望と折り合いをつけている部分が、プリリズからプリパラへの「継承」を描いた大半の部分とルート1~3であり、折り合いをつけられなかった部分がルート4であったのだ。

ルート4という分岐が描かれることは、世間の大きな流れからすればほんの小さなアクシデントだったのかもしれない。それこそ、うっかりバナナの皮を踏んでしまうような、小さな出来事。しかし、そこから分岐した枝は育ち、キンプリという実りをつけた。

少し飛躍があるかもしれないが、「キンプリが公開されることによって、ツアーズという映画は完成した」とわたしは言いたい。「つなぐ」ことで煌めくプリズムの煌めき。ツアーズという映画が、プリリズとプリパラをつなぐものであると同時に、ボーイズ企画を未来へとつないでいくためのものでもあったことがわかった。キンプリへと繋がったことにより、ツアーズは、真にプリズムの煌めきに満ち溢れる映画となった。プリティーリズムを語り続けたいという強い意志が、ツアーズをそういう映画にした。わたしはその美しい達成を、完成とよびたい。

 

キンプリのflavorがツアーズのflavorを承けたものだということは、以上から明らかだろう。プリズムショーの構成であるとか、そういった視覚的相似はもちろんのことだが、ツアーズのflavorでオバレと観客の間に結ばれた再会の約束がキンプリという形で果たされていることを、キンプリのflavorはつよく意識させるのだ。

ツアーズからキンプリへの、美しい繋がり。flavorが特に印象に残っているのは、そういう理由からだ。

 

・新主人公、シン

シンというキャラクターは春音あいら性がとても高いキャラクターで、冒頭のスタァ…のやりとりもそうだし、記憶違いでなければ風呂場で転ぶところもぎゃふん!と言っていたと思うのだけど、ラストで急にショーをするよう聖に言われるくだりも、AD1話のJUNあいらを彷彿とさせるものだった。ただこのシーンからは、RL34話「ハピなるなら手をつなごう」の、照明が暗くなり泣き声が響くシーンも想起したので、このシンというキャラクターには、ADとRLの対比、あるいは融合、といった方向性がもたせられているのではないかと思った。それは太陽と月の対比とも関係があるかもしれないし、あるいは「プリズムの輝き」と「プリズムの煌めき」という2つのタームの差異と繋がるものかもしれない。

細かくは覚えてないのだが、このキンプリという映画では、「輝き」という語が「煌めき」よりも多く使われていたような印象がある。これは今度観た時に検証しようと思っている。その印象もあって、今回、レビューのタイトルを「KING OF PRISMの輝き」とした。

 

・KING OF PRISMという映画

flavorをツアーズの経緯を語り直すものとみるとき、その後の展開である、プリズムショーに触れて間もないシンが新たなショーを見せることにより客席の光が復活する、という経緯は、「新しくプリズムショーに触れた者こそがツアーズの先、プリティーリズムの未来を拓いてゆくのだ」というメッセージと解釈できる。これは監督が前述のニコ生で、キンプリには友達を誘って観に行くようにうながしていたこととも重なる。

つまりキンプリとは、新しい人がプリズムショー/プリティーリズムに触れることを期待した作品であるのだ。プリズムショー/プリティーリズムをより多くの人に広めること。観た人の世界を輝かせること。そして、更なる物語を語り続けること。この三つの祈りが込められた作品がKING OF PRISMなのだ。

簡単に見つかるオアシスは蜃気楼。熱せられた砂を掘り、指先の痛みに耐えて見つけた湧き水だからこそ魂を潤し、止まりかけたキャラバンの背中を押した…やがて君たちは星に導かれ、真のスターとして漆黒の闇に光を放つことを、俺は約束する。

監督は前述のニコ生において、キンプリをどういうものにするかについて、「プリティーリズムシリーズのラストをかざる、アニバーサリー的なものも考えました。ドラマ性を全く排除してライブ中心にまとめ、応援上映会でまたみんなと大騒ぎして今までありがとうさようなら、と締めくくるのがいいのではないかと。」と語った。このような映画も楽しいものだっただろうとは思う。しかし、監督とファンとがお互いを見つめあってしまっていては、「低い」ものが出来上がってしまっていただろうと思う。

結局、オリジナルの新作ストーリーを語ることを監督は選んだ。新作カットを大量につけて、「予算ぎりぎりいっぱいの、本当は大赤字の力作」を作ってのけた。監督は熱せられた砂を掘ってでも、新たにプリティーリズムに触れる「新しい仲間」を増やす方向へと歩みだした。

ファンもまた、監督と同じ方向を向いて進みつつある。キンプリを見せる、というファンの活動は広がっている。わたしも言う。

KING OF PRISMを観てください。

プリティーリズムを観てください。