末吉日記

マンガとアニメのレビューとプリズムの煌めき

劇場版アイカツスターズ!を観た

「劇場版アイカツスターズ!」&「アイカツ!ねらわれた魔法のアイカツ!カード」の二本立て上映を観てきました。

以下映画の内容にふれるネタバレがあります。また、映画への否定的な記述が含まれています。そういったものを読みたくない人は読まないことを推奨します。

 

 

 

 

 

 

アイカツ!ねらわれた魔法のアイカツ!カード」

この映画は、とても悲しいフィナーレだと思いました。

この映画に出てくるアイドルたちというのは、これまでの178話ものエピソードを駆け抜けてきたアイドルたちであって、彼女たちには膨大な物語が刻まれているわけです。そして、これまでのアイカツは、その膨大な物語を逐一細やかに参照しながら新たな物語を紡ぎだしてきていました。この細やかな参照というのがアイカツの魅力の中核を占めていると、私は思っています。

今回の映画では、その「参照」をしないように描かれていたように思います。アイドルたちは、そのキャラクターに原始的に与えられた上っ面の設定だけを忠実に守る、過去のエピソードから切り離された存在として描き続けられました。私は、そのようなアイドルたちからは、生気をまったく感じられませんでした。

「あの日があって今が最高になる」という詞もありますが、過去と繋がっているということを示すことによってアイドルの今を輝かせる。そういう語り口でアイカツは物語られてきたと思います。特に3期以降にはそれが顕著だったと思いますが、だからこそ、過去と切り離されたアイドルは輝きを失い、色あせて見えてしまいました。

 

あんな悲しい崖登り見たくなかった。さっきまでびゅんびゅん空を飛んでた人の崖登りなんて見ても悲しいだけでしょう。なんであんな、アイカツの上っ面しか知らない人が書くようなシーンを作ったのかわかりません。まったくわからなくて、とても悲しいです。これが本当にフィナーレで良いのでしょうか。

 

唯一キャラクターに生気を感じたのがCGダンスシーンの間奏でした。あそこの風沢そらだけはもう一度観たいです。

 

「劇場版アイカツスターズ!

ゆめとローラがけんかして仲直りするだけのシンプルなストーリーですが、要所要所がしっかりと演出されていて見応えがありました。特に岬で仲直りする際の、お互いの顔と顔を至近に寄せてのやり取りは感極まる圧巻のクライマックスでした。互いが互いを夢中になって求め合う少女たちの微熱、リゾートの島での、すこしうわっついたところのある――しかし真摯でもある、真心のこもった「好き」が飛び交う、そういった熱の溢れかえった、素晴らしくラブリーなシーンだったと思います。

そこに至るまでの経緯もスマートに語られていて良かったです。たとえば、忘れ物を取りに帰ったゆめが迷うシーン。これは、ゆめの方向音痴設定を思い出させるものでもありながら、島のリゾートの雰囲気にゆめが慣れていくプロセスでもあり、そしてマオリと出会うきっかけにもなっています。そういえば1話では学園内で迷ったゆめはすばると出会いましたが、劇場版では少女マオリと出会いましたね。それはともかく、ああ、ゆめってこういう子だったなというキャラクター性の確認と、島の状況の説明と、ストーリーの転換とを一つの流れでやってのけるスマートな語りには好感が持てます。

S4のステージも素晴らしかったです。ステージの地面の楕円形のきらきらがカメラの回転に合わせてギュインギュイン回転するところにコズミックなS4のスケールが感じられました。始まる前のリルビーリルウィン(リルビーリルウィンではない)も期待する気持ちを盛り上げてくれて良かったですね。

 

・総合的に

スターズは素晴らしい作品でしたが、アイカツの方はらしさが失われた、あまり良くないタイプのお祭りムービーだと感じました。

今回のアイカツは、過去のエピソードの延長線上に置かれていない地に足の付かない物語であり、結果としてアイカツへの興味は減衰され、代わりにアイカツスターズへの興味が増幅されるような出来になっていますが、これはスターズのプロデュースにとっては追い風となっているように思われます。アイカツアイカツスターズが客を奪い合う体制は望ましいものではないでしょうし、早いタイミングでの移行が望まれてはいるでしょう。だからアイカツ側がデチューンされているのだ、というのはあまりにも陰謀論的な見方に過ぎるのですが、まあ出来上がった結果としてはそうなっているなあ、という感触があります。あまりにもアイカツがらしくなさ過ぎます。とにかく、私はもっと面白く、もっとこれまでのアイカツと地続きであるような、アイカツらしいものが観たかったです。スターズはキュートでラブリーで最高。ピース。おわり。